北海道では神棚に、伊勢の神宮大麻《天照皇大神宮》、氏神様を始め崇敬神社の神札とともに、 正月には半紙大の年神様の神札が祀られることが多く見られます。 形式は年と言う文字の草書体で宝珠をかたどった中に神名を記すもの、神影をえがいたものなど様々です。 また、御神酒を入れる瓶子(へいじ)《おみきすず》には、神酒口である雄蝶(おちょう)、雌蝶(めちょう)を飾り、 紙に縁起のよい絵柄を切り抜いた欄間御幣(らんまごへい)を神棚に飾る地方もあります。 門松はトドマツの枝が多く、注連縄(しめなわ)《としな》とともに玄関に飾られましたが、 住居の変化により少なくなり、玄関の注連縄も輪飾りが主流となっています。
欄間御幣
欄間御幣
神酒口
新年を迎え、元旦の午前0時を期して初詣が始まり、各神社では歳旦祭を斎行します。
道南地方の神社では正月に「門祓い」が行われます。 神職とともに、先振り、楽人、塩打ち、祓い串などの20人程が行列をなして町内の家々を一軒ずつ祓い清めてまわります。 家々ではお初穂、お神酒などを用意して新年の祓いを受けます。
正月7日に春の七草を入れた粥を食べ今年1年の邪気を払うのが「七草」ですが、 道南地方では1月7日を「松引き」と呼んで、門松などの正月飾りを下げる日であり、 注連飾り《としな》をさげ、神社に持参して「どんど焼」を行います。
1月11日は船舶と大漁の守護神である船魂(玉)様を祭る漁家の行事です。 各漁港では漁船に大漁旗を飾り、神職を招き祭事を行い、神楽が奉納される地方もあります。
1月1日(大正月)から1月15日(小正月)までを松の内として、 正月飾りを下げて焼き納める「どんど焼き」を行う地方が多いようです。
北海道神宮 古札焼納祭(どんど焼き)
北海道では正月から春先まで、「春祈祷」と称して、神職が氏子の家々を訪問し、一年の幸福を祈る風習があります。
冬と春の分かれ目が立春の前の日の節分です。 節分には鬼退治の豆まき行事が一般に知られていますが、 北海道の神社ではこの頃に厄祓や年祝い(ともに数え年)が行われます。
北海道神宮 豆まき神事
北海道は稲荷勧請(いなりかんじょう)が盛んで江戸時代から沿岸地方の請負場所(うけおいばしょ)には、 多く稲荷大神が祭られました。 桧山支庁管内北桧山町の鵜泊(うどまり)稲荷神社には鰊漁が盛んであったころの名残をとどめ、 鰊の白子にかたどった米の粉を水でといた物を直会でお互いの顔に塗りあう、初午の「オシロイまつり」が伝承されています。
2月17日、各神社では祈年祭を斎行して豊作を祈念します。
社日(しゃにち)は春分・秋分に日に最も近い戊(つちのえ)の日を言い、 「地神」あるいは「社日の神」と称する土地の神をまつり、春には豊作を祈願し、秋には収穫を感謝します。 北海道の地神は五角柱の石碑に「天照皇大御神」をはじめ5柱の祭神名を刻んだもので、 その祭神名は地方によって差異があるようです。 また「地神」「社日」とのみ彫られた石碑もあります。 ちなみに上川支庁管内当麻町には47基の地神碑があると報告されています。
6月15日は札幌市の北海道神宮例祭で、翌16日は4基の鳳輦と8基の山車が市内を巡幸します。 かつて北海道ではこの祭りが春と夏の分かれ目とされ、夏服に衣替えしていました。
6月30日は大祓で、半年の罪穢れを形代(かたしろ)に託し祓い清める神事が各神社であり、 茅の輪くぐりの行事を行うところもあります。
千歳神社 夏越の祓
沿岸地方の神社の例祭はこの時期が多く、 7月は8日が後志支庁管内岩内町岩内神社、 15日が小樽市住吉神社、苫小牧市樽前山神社、釧路市厳島神社、 8月は5日が桧山支庁管内江差町姥神大神宮、 10日が根室市金刀比羅神社、 15日が函館八幡宮、室蘭八幡宮などの例祭日であり、神輿の海上渡御もあります。
7月21日は旭川市上川神社例祭です。 神社の例祭に氏子に家々の軒に竹ひごに和紙で作った花びらを張った「軒花」を刺す風習や、 神輿渡御の行列の笛太鼓が聞こえてくると、 盆に白米を盛りその上に硬貨を半紙でくるんだものを載せた「オサゴ」を準備して供える事もあまり見られなくなりました。
樽前山神社 海上渡御祭
小樽住吉神社 例祭
北海道内陸部の神社の例祭は9月が多く、札幌市内の神社の例祭はほとんどが9月です。 15日が岩見沢神社、北見神社、24日が帯広神社の例祭です。 北海道の神社の例祭の特徴は必ず宵宮祭を斎行することであり、 江戸時代に松前地方の神社の祭典が宵宮を行う形態が明治以降も伝統となったと思われます。
函館八幡宮 御神輿
帯廣神社 御神輿
本州の七五三は11月15日に行われますが、札幌市内及び北海道の一部地域では10月に七五三詣を行います。 11月になると雪が降り寒さが増してくるため、札幌市内の神社が1ヶ月繰り上げて実施したのが始まりといわれています。 現在では10月15日から11月15日までの間に実施しているようです。
各神社では神の恵みにより無事新穀を収穫できたことを感謝する新嘗祭《新穀感謝祭》が11月23日に斎行されます。
新嘗祭
事始(事納)の日である12月8日に針供養が行われますが、2月8日にも行います。
各神社では一年間の罪穢れを祓う大祓を行い、新年を迎える準備をします。